■ -第17回- CUOCEREいろいろ (2009/6/11) <バックナンバー>
Salve amici! E` un po’ di tempo che non ci sentiamo. Come state?
(サールヴェ アミーチ! エ ウン ポ ディ テンポ ケ ノン チ センティアーモ. コメ スターテ?)
皆さんこんにちは。お久しぶりです。いかがお過ごしですか?
今日は小学校3年生向けのイタリア語のテキストから「STORIA DEL SOLE E DELLA LUNA
(太陽と月のお話)」をご紹介します。
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その昔、太陽と月は夫婦でした。
Accadde che il Sole, tornato a casa dal solito giro intorno al mondo, non trovo` la cena pronta.
La Luna aveva sonnecchiato tutto il giorno.
ある時、太陽がいつもの世界巡回から帰ってくると夕ごはんの準備ができていませんでした。
月は一日じゅう居眠りをしていたのです。
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「せめて水だけでも持ってきてくれよ」と、夫は不機嫌に言いました。
でも無駄なことでした。
月は動こうとしませんでした。
Il Sole accese il fuoco e fece cuocere la polenta.
La Luna stava a guardare.
A cottura ultimata, il Sole rovescio` sul tagliere il cibo fumante.
Non si era ancora seduto che la Luna si precipito` sulla polenta e se ne taglio` una fetta.
太陽は火をつけてポレンタを煮ることにしました。
月はその様子を見ていました。
料理ができあがったので、太陽は湯気がたっているその食べ物をまな板の上に取り出しました。
すると、太陽がまだ席に座る間もなく、月がポレンタに向かって飛んできて自分のために一切れ切り取ってしまいました。
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それを見て、とうとう堪忍袋の緒が切れてしまった太陽は叫びました:
「ああ!きみは食べる時はすばしっこく動けるんだね。それなのに台所であくせく動くのは僕の役目ってわけか!」
Il Sole urlo` talmente che la Luna corse a nascondersi per la paura.
Da allora il Sole e la Luna non si sono mai piu` rappacificati.
太陽の叫び声があまりに大きかったので、驚いた月はあわてて隠れてしまいました。
そのときからずっと太陽と月は仲直りをしていないのです。
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だから今でも空に彼らの姿が、はじめは太陽、その次は月、と別々にしか見えないのですよ。
(イタリア語版テキストの全文は、 こちらをどうぞ。)
******************************************************** はー。お月様のグータラ妻ぶりに思わず我が身を重ねて反省させられるお話ですー。
が、イタリア語講座としての着目点はそんなところにあるのではなく、今回のキーワードは“cuocere(クオチェレ)”です。
上記テキストでは疲れて帰ってきた太陽が夕飯を自分で作る場面の
Il Sole accese il fuoco e fece cuocere la polenta.
という文で出てきます。
「〜を加熱する、〜に火を通す」という意味の他動詞としても、また「火が通る」という意味の自動詞としても使われます。上の文章も「太陽は火をつけてポレンタを煮ることにしました。」と他動詞のように意訳してしまっていますが、実際は自動詞で、直訳すると「太陽は火をつけてポレンタが煮えるようにしました。」となります。
「料理する」という意味の“cucinare”が必ずしも加熱することとは限らないのに対して、“cuocere”は火を通す作業や過程の一般を表わし、料理レシピに出てくる時は「煮る」「焼く」「炒める」「茹でる」「蒸す」など様々に訳すことができます。
どのように調理するかを具体的に言いたい時には
cuocere ○○ a vapore : ○○を蒸す
cuocere ○○ a lesso : ○○を茹でる
cuocere ○○ a bagnomaria : ○○を湯煎する
cuocere ○○ a fuoco lento : ○○を弱火で調理する
cuocere ○○ al microonde : ○○を電子レンジで調理する
cuocere ○○ alla griglia : ○○をグリルする
のようにcuocereの後にaをつけてから、それぞれの調理法で使われる器具や方法を付け足します。
「蒸すこと」「茹でること」「とろ火で煮ること」などのように調理方法を名詞にしたい時にはla cottura a vapore、la cottura a lesso、la cottura a fuoco lento と、cuocereをla cottura(コットゥーラ=調理法)という名詞に差し替えればOKです。
一方、パンやケーキなどオーブンで調理するものは
far cuocere il pane
far cuocere la torta
と、自動詞扱いとするのが一般的です。オーブン料理は下ごしらえをして放り込んだら後はほとんど手間要らずで勝手に出来上がってくれるからでしょうか。
そういえば今回のテキストで自動詞扱いとなっているポレンタも、沸騰したお湯に塩少々を加えてトウモロコシの粉を投入したら、あとは時々グリグリとかき混ぜるぐらいの手間要らずで「時間がたったら出来上がり」感が強いお料理の一つです。
“cuocere a …”を使わない調理表現には「arrostire=ローストする」「rosolare=油脂を使ってキツネ色に焼く(炒める)」「friggere=揚げる」「bollire=(グツグツと)茹でる / 煮る」「saltare=(強火でサッと)炒める」などがあります。
cuocereの前にsがついたscuocereは、「茹ですぎ」「焼きすぎ」など「調理しすぎる」という意味になります。こうなってしまったら全然おいしくありません。
そして、cuocereの過去分詞cottoを使った「Cotto e mangiato.」という表現は、直訳すると「作った。食べた。」ですが、チャチャッと手早く作ってすぐに食べれるお料理のことを指します。そこから派生して「物事を手早く処理する。」という意味で用いられることもあります。
cuocereは料理だけではなく陶器やレンガの焼成、日光などでの乾燥も意味します。
今や日本語化しているテラコッタも、元はといえばterra(=土)とcuocereの過去分詞cottoとが結びついたもので、直訳すると「焼いた土」です。
cuocereの現在分詞のcocenteは「灼熱の」とか「燃えるような」という意味になり、
Bisogna proteggersi dal sole cocente d’estate per non prendere le scottature.
(ひどい日焼けにならないように夏の灼熱の太陽から身を守らなくてはいけない。)
などと使われます。
文末の「le scottature(ひどい日焼け / やけど)」もcuocereからの派生語です。
l’abbronzatura(日焼け)が大好きなイタリアの人たちでも、肌が真っ赤になってヒリヒリするようなひどい日焼けはやっぱりいかんと思ってるようです。
また、日本語で「身を焦がすような恋」という比喩があるように、イタリアにもcuocereの過去分詞cottoやその派生語を使っての似たような表現があります。
Sono innamorata cotta dell’ex della mia migliore amica.
(親友の元カレに思い切り恋してしまった。)
Giulio e` cotto di una sua compagna di classe.
(ジュリオはクラスメートの女の子に夢中だ。)
Ho una cotta per Silvia ma non so come dirlo.
(僕はシルヴィアが好きなんだけど、どう告白していいかわからないんだ。)
イタリアの若者達も日々を迷走しているのですね。
ちなみにcottoやcottaの対象を明確にせず、単に“Sono cotto .(女子ならcotta)” だけだと「ヘロヘロに疲れている。」とか「酔っぱらってしまった。」の意味。
私の日常ではこちらの用法のほうが実用的(というかcotta di〜とかcotta per〜の出番は皆無)なのですが、皆さんはいかがでしょうか?
「命短し、恋せよ乙女♪」ですよ〜。Mi raccomando.(よろしく。)
ではでは、Alla prossima!!(また次回お会いしましょう!!)
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